目次

公式(忘れるなら覚えない)

 理系の工学系の講義では、理論からいろいろな公式、定理を
 導出していきます。その公式は、中学校、高校の知識がない
 と変形過程が理解できなかったり、より単純な数式への変換
 ができなかったりします。

 ここでは、基本公式の導出と基本公式から、さらに導出される
 公式を見ていきます。

 公式は覚えると忘れます。
 公式は、その場で導出して利用するとしましょう。

 自分は大学入試のときに、数学、物理の公式は殆ど
 覚えていませんでした。その場で導けるようにして
 少ない頭の記憶容量を他のことに振り分けてました。

 自分の大学受験のとき、名古屋大学の数学の試験では
 公式集が配布されていました。

 公式を忘れて解けないということで、優秀な頭脳を
 集めるための制度が、逆に作用することを回避する
 手段だったのかも知れません。

3角関数

 自分が高校生の頃、数学のカリキュラムは、1年生で数学I  2年生で数学IIBと分けられていました。  数学Iの3角関数は、公式をまったく覚えられませんでした。  単位円を利用して、原点の周りを回転するときの公式を直感  で理解できなかったのです。  そんな状態でしたが、数学IIBの中で行列を扱うようになり  数学Iで扱う3角関数の公式は、ほぼ網羅できたので公式を  導いて利用できるようになりました。  正弦、余弦の定義から導ける公式   正弦、余弦の定義は、平面にある線分の横軸、縦軸の成分が   どのくらいになるのかを示しています。   ある角度で正弦値、余弦値の2乗値を加えると1になります。  位相の和差に関係する公式   正弦、余弦の角度の和、差で、値がどうなるのかを求める公式を   行列を利用して導いてみます。   XY平面で、原点の周りに左周りで、点(1,0)、(0,1)が角度Aだけ   回転することを考えます。   角度2Aの回転は、角度Aの回転を2回実行するのと同じで   回転を表す行列の積で表現できます。   角度(A+B)の回転は、角度Aの回転をし、次に角度Bの回転   をすればよいので、異なる角度の回転を表す行列の積で   表現できます。   偶関数、奇関数は、XY平面に点を打って、正弦、余弦の   値を見れば、すぐにわかります。   余弦の場合、第1象限と第4象限でX方向の成分になるため   X軸上にある値は、変化しません。   正弦の場合、第1象限と第3象限でY方向の成分になるため   Y軸上の値は、符号反転します。   偶関数、奇関数の性質は、導いた公式からでも計算できます。   角度が3Aのようになった場合は、2AとAの場合の回転行列を   利用して積を求めればよくなります、   行列は、次の性質をもちます。   これを線形性があるといいます。    f(ux) = uf(x)  f(ux+vy) = uf(x)+vf(y)   線形性を利用し、基本となる回転行列から   公式を組み立てていきます。

力学

 高校の理科で扱う物理では、力学の中でも最初に  次の公式が出てきます。  微分、積分の知識があると、加速度αを時間で積分  して速度、速度を時間で積分すると距離になること  と因数分解により導けます。  積分すると、積分定数が必要になるので  加速度から速度を求めるとき、速度から  距離を求めるときに必要になります。  力学は、微分方程式、積分方程式を解くことで  必要な公式を導けるので、角度にまで拡張する  と、電磁気学の公式を導出できます。  角加速度をaとしたなら、角速度はその時間積分になり  角速度の時間積分が、接線方向の移動距離になります。  角度をラジアンで表すと、半径rで回転したなら  接線方法の移動距離が、角度と半径の積になります。

数列

 数列では、いろいろな公式が出てきます。  数列の定義が出来ると、等差中項、等比中項は  計算ですぐに求められます。  等差中項   等差数列の3項がa、b、cでこの順番に並んでいるとする。   差は常に一定でdなので、次の2式が成立。    b - a = d    c - b = d   辺々の差を求める。 b - a - c + b = 0 2b = a + c b = (a+c)/2    a、cの相加平均はbとなる。  等比中項   等比数列の3項がa、b、cでこの順番に並んでいるとする。   比は常に一定でrなので、次の2式が成立。    b = ar    c = br   辺々の比率rを求める。 b / a = c / b = r b / a = c / b bで整理する。 b*b = a*c    a、cの相乗平均はbとなる。  実数の範囲では、相加平均は相乗平均よりも大きく  なります。統計で、数値に関してコメントする場合  意図した方向に持っていく場合に利用されます。  (相加平均>=相乗平均)の証明    (x+y)^2 - 4xy = (x+y)(x+y) = x^2 + yx + xy + y^2 - 4xy = x^2 + y^2 - 2xy = (x-y)^2    (x-y)^2は、実数の範囲では0以上。     (x+y)^2 - 4xy > 0     (x+y)^2 - 4xy = 0    なので     (x+y)^2 > 4xy     (x+y)^2 = 4xy 辺々がともに0以上なので、両辺の平方根を    とっても、大小関係は変わらない。     x+y > (4xy)^(1/2)     x+y = (4xy)^(1/2) 平方根の4は2なので     (x+y)/2 > (xy)^(1/2)     (x+y)/2 = (xy)^(1/2)  1+2+..+n=n(n+1)/2   この証明は、気がつけばパズルです。   Sn = 1 + 2 + .. + n 加算項をnから1に並べ替える。   Sn = n + (n-1) + .. + 1 辺々の和を求める。   2Sn = (n+1) + (n+1) + .. + (n+1) = (n+1)n 整理。 Sn = 1 + 2 + .. + n = n(n+1)/2   煉瓦積みをイメージしたり、ピラミッドに使われている石の数を   求めるときに使えます。   段を4とすると、長方形に並べて4x5のカタチを作って   半分にすれば10と計算できます。   段の数に1を加えて乗算し、2で割れば必要な数の煉瓦は   いくつになるのかわかります。   長方形にするのが、左から右に並んでいる数値を右から左   にしても結果は変わらないということになります。長方形   の面積を求めて、半分にすることは、次の式と同じ。 Sn = 1 + 2 + .. + n = n(n+1)/2   面積という単語が出てきたので、定積分は面積を求めること   と等価であるのを、図で理解できます。  等差数列の漸化式は、直線の式を元に作ってあります。  直線の式は、図のように傾きとy切片がわかれば定義できます。  直線の式のx、yをx(n)、x(n+1)で置換して x(n+1) = αx(n) + (y0-αx0)  さらに定数値をAで置換。  x(n+1) = αx(n) + A  上の漸化式は、鉄道で使われるパーミルのもとになります。  1000m移動して、上下の変化量を  表現するためにパーミルを利用。  1000分の25勾配(25パーミル)の坂は  蒸気機関車での牽引はきつい傾斜だとか。  α=25としたとき、x(n+1)-x(n) が1000に  なっているのが、25パーミルである。 25/1000を25パーミルという。  公式を「忘れるならば覚えない」というスタンスであれば  鉄道で使われる単位で理解しても問題はないということ。  漸化式 q = αp + b は、x(n+1) = αx(n) + Aが  元になっている。x(n+1)とx(n)の差分が1になる  と、等差数列の式と等価である。  ただしαは0ではない。  直線を表現する式と漸化式が同じでも、直線の場合  定義域は実数の範囲。漸化式は、0または自然数を  とる。  等比数列の漸化式は、曲線の式を元に作ってあります。  曲線の式のx、yをx(n)、x(n+1)で置換して x(n+1) = α(x(n)^m) <^は、指数部を表現する記号>  いろいろな曲線がありますが、定義域が増えると  値が増加するか、減少するかのどちらかの曲線に  漸化式があてはまります。  図中にあるαとmの値を変えると、直線や曲線の形状が  変化することを見ると、等比数列の漸化式を応用する時  の理解が早まります。  α=1、m=1   条件を数式に代入すると、y=1^x=1になります。   x軸に平行な直線を表します。   αを正にすれば、x軸の上になり、負にすると   x軸の下になります。  α>1、m>1   条件を数式に代入すると、xの値の増加に伴い   得られる値が増加します。   αの値が1から離れるのに伴って、増加の変化量が増えます。   物理現象では、発散する方向に向かっていきます。  α>1、1>m>0   条件を数式に代入すると、xの値の増加に伴い   得られる値が減少します。   αの値が1から離れるのに伴って、減少度合いが増します。   物理現象では、一定値に収束する方向に向かっていきます。   無限に一定値に近づきますが、実世界では一定値に達します。  α=1、m>1   条件を数式に代入すると、xの値の増加に伴い   得られる値が増加します。   m=2のときは、2のべき乗の数が得られて   コンピュータで使われる数値を表現する式に   置き変わります。   コンピュータで計算できることを利用すれば   数表を、欲しい時に得られます。  α<>0、0>m   この条件があると、得られる数値はxが奇数と   偶数のときで、符号が反転します。   物理現象では、時間が進むにつれて、得られる   数値が振動することがわかります。   振動を伴う物理現象をシミュレーションするときに   この性質を使うことがあります。

目次

inserted by FC2 system