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倒立振子シミュレーション
アナログコンピュータは、微分方程式を解くために
開発されたので、微分方程式の例として倒立振子の
動作を扱ってみます。
棒の下に車輪をつけ、棒が倒立した状態を
維持するように制御します。
倒立振子の制御は、デジタルコンピュータを利用するのが
定番ですが、動作を解析するには、アナログコンピュータ
の方が簡単だと考えられます。
フィードバック制御になるので、フィードバック制御の
基本と言えば、PIDでしょう。
PID制御のブロック図は、以下のようになります。
PIDは、Propotional、Integral、Differenceの3要素で
比例、積分、微分となり、入力に減算器、出力に加算器
を配置します。
これらの要素をOPアンプで構成すると、以下。
加算
減算
比例(倍率器)
積分
微分
PID制御の組み合わせは、次のようになります。
このPID制御回路は、実際には使えません。
機械要素を含んだ場合、対象に操作量を与えても、反応が
かえってくるのは、それなりの時間がかかります。
応答時間が遅れることを考慮し、フィードバック部分に
無駄時間を入れて対応します。
ブロック図(=PID制御回路)が出来たので、実際の倒立振子に
対応させるために、対象の運動を方程式にまとめます。
フィードバック制御の場合、目標値と観測値の偏差をゼロに
する動作ができればよいとします。
振動なく滑らかに静止するとか、振動があってもよいから
目標値に高速で到達するとかの指標は、偏差をゼロにする
までのプロセスに関連するので、偏差をゼロにする動作を
実現させます。
目標値と観測値に何を利用するかとなれば、倒立振子に
存在する棒の角度になります。
鉛直方向からはかった棒の傾き角度をゼロにするのが
目的になるので、目標値は角度ゼロとします。
観測値は、棒の傾き角度を使えばよいので、偏差を
求める回路は、次のように定義できます。
アナログコンピュータで扱う物理量は、電圧や電流なので
電圧に変換して偏差を表現します。
角度を電圧量に変換するには、ポテンショメータで角度→
抵抗値→電圧値と変換します。
アナログコンピュータによるシミュレーション
では代用の可変抵抗器Volumeを使います。
ポテンショメータは、可変抵抗器に比べて高価なので
シミュレーションのような仮想環境で利用するには
ふさわしくないでしょう。
電圧を出力する回路であれば何でもよいので、PSoCや
PICのようなマイコンを使うこともできます。
倒立振子の動作をシミュレーションするには、次の
ような無駄時間を生成する回路を使います。
積分回路(1次ローパスフィルタ)を多段接続して
与えた電圧が、ある時間差を持って出力されるよう
にします。
時間差は時定数を抵抗値と静電容量値の積で求められるので
対象を実現しやすいという長所があります。
抵抗値は、金属皮膜抵抗を利用すると1%程度は確保できます。
また、静電容量は10%程度の精度のデバイスしか入手できない
ですが、可変抵抗器を利用して調整できます。
実際の倒立振子があればステップ応答を入れ、角度が
どういう値になるのか、電圧値で測定します。
ユニット電圧を入力して、少し時間が経過してから
出力電圧値が変化をはじめるので、変化開始までの
時間を、積分回路(1次ローパスフィルタ)で生成
します。
倒立振子を2輪で実現する場合、角度の変化を検出後
モーターを回す信号を与えたとしても、メカなので
即座に動けるわけでもないため、無駄時間を入れます。
角度変化を電圧で出力するセンサーとして、入手性が
よいのはジャイロです。手持ちの圧電振動ジャイロを
利用してみます。
角度変化は、角速度ですから、積分すると角度になります。
ジャイロセンサーを使うと、ステップ関数に対する角速度が
わかります。
積分回路は出力が反転するので、反転器で位相を元に戻します。
積分回路では、発散しないようにOPアンプの利得を
制限しておきます。利得制限がリミッターとしての
役割を担うので、可変抵抗器にして調整します。
微分回路では、指令となる信号がある程度まで引伸ばし
しないと、効果が現れないのでストレッチ処理します。
遅延回路でストレッチする場合、キャパシタの充電回路
を使います。
(under construction)
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