目次

CDIシミュレーション

 1980年初頭から1990年後半くらいまで、バイクエンジンは
 点火制御にCDI(Capacitor Discharge Injection)を利用
 していました。

 配線図で示すと、以下。



 点火プラグに火花を飛ばすために、インダクタ(コイル)に
 発生する逆起電力を利用。

 インダクタに流している電流をカットすると、慣性の法則で
 電流の流れは即座に止まらず、電流の供給源はリアクタンス
 分が蓄えていた電磁界エネルギーになります。

 蛍光灯の管の中でおきる放電と同じ現象が、スパークプラグの
 電極間で発生して火花が飛びます。

 スパークプラグの電極間に火花を飛ばすくらいの電圧は300Vくらい。
 この電圧を生成するための回路は、以下。



 Excitorコイルが、交流電圧を生成するので左にある
 キャパシタに電荷をためます。さらに右にある2本
 のダイオードで2倍圧整流し、右のキャパシタへと
 電荷を伝達。

 逆電圧は、電流の流れを止めると発生するので
 キャパシタの電荷を放出するように、SCRで
 つくるスイッチを入れて制御します。



 キャパシタに電荷を蓄える回路をシミュレーションしてみます。
 必要なブロックをリストすると、以下。

 LTSpiceの回路図エディタで示すと、次のようになります。
 ダイオードD1は、キャパシタC1からC2にだけ電荷が移動する
 ようにするため必要です。D2は、2倍圧整流のために利用。



 発電機で200Hzの交流電圧を生成します。

 バイクのエンジンの回転数は、12000rpmまで回すと
 なれば、1秒間では200回転になります。
 200回転は200Hzなので、周波数は現実とかけ離れて
 いないでしょう。

 抵抗、キャパシタ、インダクタの設定値は、実際の
 CDIで利用されている数値とほぼ同じに設定。

 インダクタは、正味のインダクタンス値に抵抗分が
 加わるので外付け抵抗で模擬します。

 インダクタは、点火プラグに火花を飛ばすための
 トランスの1次側をシミュレート。

 1次側のインダクタに含まれる抵抗値が大きいと
 自己発熱で焼損するため、小さな値を選んでいます。

 CDIでは、キャパシタに蓄えた電界エネルギーを利用する
 ので、右にあるキャパシタC2に電荷がどのように貯まるか
 を電流に置換して確認。(青色の信号波形)



 電流は電荷の移動で発生するので、バイクのエンジンが
 かかって、回り続けているとオルタネータ(発電機)が
 生成した交流波形のプラス側だけを利用し、キャパシタ
 に電荷を蓄えています。

 電荷が蓄えられるに連れて、時間と共に流れる電流量が
 減っていっているのが、タイミングチャートから理解
 できるでしょう。

 CDIでは、キャパシタの電荷を一気に放出させるので
 スイッチング素子を接続してシミュレート。

 スイッチング素子に、NchMOSFETを利用し、ゲートに
 10Hzの正弦波を加えてみます。(10Hzで点火している
 のと同じです。)



 右のキャパシタで電荷の充放電がどうなるのかを、電流の
 変化でシミュレート。



 電荷が、10Hz(=0.1ms)ごとに一気に放出されるのが
 わかります。電荷放出が終わると、発電機の交流で
 再度蓄えられるのを電流波形で見られます。
 充放電で、電流の向きが変わるので、放電後に充電
 のため、逆方向に電流が流れています。

 バイクに使われているCDIの回路は、以下。



 この回路は、交流発電機を利用しているのでAC-CDIと
 呼ばれます。交流発電機を使わず、DCDCコンバータで
 キャパシタに、電荷を蓄えるDC-CDIもあります。



 DC-CDIでは、キャパシタに電荷を蓄えるためにDCDCコンバータ
 を使い、昇圧してスイッチングで擬似交流を生成します。

 AC-CDI、DC-CDIともに、エンジンの回転を拾うために
 フォトカプラを使っています。エンジンの回転がない
 場合、プラグに火花が飛ばないので、内燃機関利用の
 エンジンは止まります。

 プラグに火花が飛ばないと、エンジンの回転がなくなります。
 これを失火と呼び、エンジンのパワーがなくなります。

 失火があっても、フライホイールがあるので、エンジンが
 即座に停止することはないですが、パワーは出ません。

 アナログコンピュータで、CDIをシミュレーションしてみます。


オルタネータ(発電機)  AC-CDIでは、オルタネータでキャパシタに電荷を蓄えます。  オルタネータは正弦波生成器なので、WienBridge発振器を用意。  回路図のデバイス数値で、300Hzを超える周波数で発振するので  現実のオルタネータをシミュレートしているのと等価。  発振器の出力に、キャパシタ、2倍圧整流回路、MOSFETなど  を接続すると、点火装置の一部となります。  発振回路の出力波形が10Vpp程度であれば、2倍圧整流で  20Vpp程度の電圧にしかならないので、ブレッドボード上  に回路を組んで対応します。
ピックアップ  ピックアップは、点火指令を出せばよいので  20Hz程度の矩形波を生成し、代用。
アナログコンピュータ回路  CDIのシミュレートするアナログコンピュータの回路は  以下となります。  オシロスコープで測定するのは、以下。  矩形波の発振は、周波数カウンタで測定します。  正弦波の発振は、オシロスコープで確認します。  WienBridge発振器は、約1kHzで発振する治具を利用。  キャパシタ、MOSFET、インダクタ等をブレッドボードに実装。  1kHzの発振器には、上にあるキャパシタと2倍圧整流回路  に接続します。  2倍圧整流回路のダイオードのうち、1本をLEDにし  発電機が回っていることを点滅で確認できます。  コイルは、アキシャルタイプの小型インダクタを使い  1W耐圧としました。  PickUpをシミュレートする発振器出力には、MOSFETを接続。  2つの発振器の出力を2回路に接続し、インダクタの両端  電圧、キャパシタに関係する電荷充放電をオシロスコープ  で観測します。  ダイオードには抵抗を接続したので、電荷の充放電は  電流変化から電圧変化に置換して観測できます。  他の実験で使う回路を流用して実験してみました。  回路図は以下。  リレーの切替えで、キャパシタに蓄えてある電荷を放出します。  放電すると、LEDが一瞬光って、消えます。これでCDIの物理現象  を目視できるので、理解が早まるでしょう。  リレーの切替えは、トランジスタのベースにCONTROL信号を与える  仕様にし、POWER側をトランスのAC電圧(8Vくらい)に接続し発電機  の代行に。  リレーコイルの両端には、フライホイールオードを入れます。  MOSFETを使うと不要ですが。  POWERから供給される電圧で、電解キャパシタに電荷を供給。  リレーコイルで電流を流して、電解キャパシタへの電荷供給  を断つとともに、電解キャパシタの電荷をLEDに放出します。  POWERから供給する電圧は、直流、交流のどちらでもよいですが  リレーコイルに与える制御信号は、パルスでないと駄目。  このパルスをピックアップコイルから供給するか、コンピュータ  からの供給にするかでアナログ、デジタルの制御のちがいが出て  きます。  利用した電源は、以下。  トランスを使うので、直流、交流のどちらにも対応可能。  トランジスタによる次の回路でも、シミュレーションは可能。  ダイオードD1で整流するので、POWERは直流、交流の  どちらでも、キャパシタに電荷を蓄えることが可能。  トランジスタをスイッチとして、電荷を放出すると  LEDが少しの間、点灯してから消灯します。  POWER、CONTROLに独立した周波数をもつ発振器を  接続すれば、ACタイプのCDIのシミュレーション  ができます。POWERに直流電源を使えば、DCタイプ  のCDIをシミュレート。
目次

inserted by FC2 system