目次
前
次
PWM制御
最近の冷凍冷蔵庫、エアコンディショナのカタログの説明には
PAMやPWMという用語が頻繁に出てくるようになりました。
「PAMエアコンなので、効率がよい。」とか「きめ細かくPWMで制御
するので、低消費電力です。」という言葉が踊っています。
電子機器を設計、開発する技術者ならば、納得させられますが
消費者には、「回路を工夫し、より消費電力を抑えられました。」
程度の説明で、充分だと思います。
コンピュータで制御しているので、高性能です。というような
説明を、今でもやっていることに、?がつきます。
PAMやPWMと書いて、理解できる購入者が何%いるのかを考えて
宣伝してほしいところですね。
PAM、PWMの定義は、以下です。
PAM
PAM(Pulse Amplitude Modulation)は、次の回路で実現します。
交流電圧をSCR(サイリスタ)で整流してから、インダクタに
与えます。インダクタは、電磁エネルギーを蓄えるか放出する
ことで、キャパシタから出力される電圧を可変にします。
交流電圧をSCRで整流するときに、位相(角度)を調整すれば
インダクタに与える電圧の波高値を変えられます。これが
Amplitude(振幅)を制御するのと等価になり、振幅変調と
呼ばれる由縁です。
PWM
PWM(Pulse Width Modulation)は、次の回路で実現します。
交流電圧をダイオードで整流してから、半導体のスイッチング
でチョッパ回路を構成します。チョッパ回路で、インダクタへ
電磁エネルギーを蓄積か、インダクタからのエネルギー放出を
させます。電磁エネルギーは、キャパシタから出力される電圧
になります。
どちらの方式による制御であっても、負荷となるモータや
アクチュエータの周波数−電圧特性に応じた電力を供給する
のが目的です。
PWMの方が、PAMよりも実現が簡単です。
PAMでは、SCRを4つ制御しなければならないのに
対し、PWMではスイッチング素子の制御を1つに
まとめられます。
コストで考えると、ダイオード1本とSCRでは、ダイオードの
方が、遥かに値段が安いのでPWMを利用した回路を製品に入れる
ことが多くなります。
実動する機械は、3相交流を利用するので、SCRを利用した
PAMインバータでは、素子の数が12個になるのに対して
PWMを利用する場合は、スイッチングトランジスタは3個に
なります。
利用する素子数が増えると、その分だけ信頼性が落ちて
故障の頻度も増えます。故障修理時間と生産現場の稼動
を考えると、PWM方式採用が得策と言えるでしょう。
LTSpiceを使い、DUTY比で出力電力が異なるのかを
シミュレーションします。
電源は60Hz、100Vを与えて、制御電圧のDUTY比を50%とします。
シミュレーション結果は、以下。
D1の出力 :緑
FETのゲート電圧:青
キャパシタ電圧 :赤
制御電圧のDUTY比を30%とすると、以下。
この波形から出てくる結論は、次のようになります。
キャパシタにチャージされてしまうと
無負荷であれば、電圧変化はほぼない
というのがわかります。
実際は、負荷が接続されるので、DUTY比により電源と
して使えるか否かの分岐点がどこかにあるはずです。
負荷に与える電流が大きければ、高いDUTY比が必要で
小電流であれば、低いDUTY比でいけるというので電子
回路での制御を考えるのがよいでしょう。
目次
前
次