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アナログコンピュータで利用する数学

 アナログコンピュータは、OPアンプを駆使して
 数学モデルで記述したシステムを回路に変換後
 解析します。

 数学モデルを記述するには、基本となる数学の知識が
 必要です。OPアンプは、電子回路の中で使われるので
 虚数単位を利用した記述と変換に慣れていた方がよい
 でしょう。

 数学モデルを記述するときに、必要になる数学を
 虚数単位を利用して確認しておきます。

 これ以降の説明で、虚数単位はjを使います。

 電子回路では、数学で使う虚数単位のiは電流を
 表現する変数で利用するため、jを使います。

 数学でわかる内容を言葉にすると、以下。

 信号の積分は、複素数を扱う平面では90度右に回転する
 ことと同じ。微分は積分の逆演算なので、90度左に回転
 することと同じ。

 この法則がわかると、高校で習う2行2列の行列
 計算が、積分と微分に関係すると理解できます。

 2行2列の行列の計算で、行列の成分をsin、cosで
 扱うと、積の演算は、単位円上の点の位置を角度A
 をパラメータとした回転で表現することと等価。

 こんな内容もわかるようになります。

 数式は、その背後にあることに目をむけると
 非常に興味深い内容を簡潔に表現している。

 数式を扱っているうちに、数学と電子回路の関係が
 つながった美しい風景が見えるようになります。


Euler式  電気電子回路を数学を利用して扱う場合、虚数単位jを  利用したEuler式から様々な公式や性質を導出できます。  Euler式は、次のような単純な式で表せます。  (eは、ネピア数で、自然対数の底です。)  Euler式は、複素平面(ガウス平面)での極形式と  直交座標の相互変換を表現します。  Euler式は、複素平面でみると、乗算、除算が  指数部での加算、減算になり、さらに右か左  の回転と等価になることがわかります。  偏角A、絶対値は1となるようにしておいて  いろいろな性質を導出してみます。  (π/2)加算   偏角Aを、A+(π/2)として変形してみます。   偏角が、A+(π/2)となると偏角Aの信号に   虚数単位jをかけたことと等価になります。   位相で見ると、次の性質を持ちます。   偏角Aの信号に、虚数単位jをかけると   偏角が、A+(π/2)になる。   これを、微積分でみると違った意味になります。  (π/2)減算   偏角Aを、A−(π/2)として変形してみます。   偏角が、A−(π/2)となると偏角Aの信号に   虚数単位jをかけて、符号を変えたことと等価   になります。   位相で見ると、次の性質を持ちます。   偏角Aの信号に、(-j)をかけると   偏角が、A−(π/2)になる。   これを、微積分でみると違った意味になります。  π加算   偏角Aを、(A+π)として変形してみます。   偏角が、(A+π)となると偏角Aの信号に   (-1)をかけたことと等価になります。   位相で見ると、次の性質を持ちます。   偏角Aの信号に、(-1)をかけると   偏角が、(A+π)になる。   符号を反転すると、位相がπだけ遅れると言えます。  π減算   偏角Aを、(A−π)として変形してみます。   偏角が、(A−π)となると偏角Aの信号に   (-1)をかけたことと等価になります。   位相で見ると、次の性質を持ちます。   偏角Aの信号に、(-1)をかけると   偏角が、(A−π)になる。   符号を反転すると、位相がπだけ変化すると言えます。   符号反転するときは、位相をπ進めても、遅らせても   結果は同じという性質があります。  乗算   偏角A、Bとして、2つのEuler式を乗算してみます。   3角関数の和の公式が導けました。   角度の和は、積に変換できることを示しています。   偏角を同じにすると、次の公式になります。   cos(2A) = cosAcosA - sinAsinA = 2cosAcosA -1 = 1 - 2sinAsinA   sin(2A) = 2sinAcosA   2行2列の行列を利用して導くよりも単純です。   sinAの2乗は、(1/2)sin(2A)で角度が2倍になり   振幅が半分の正弦波になるとわかります。  除算   偏角A、Bとして、2つのEuler式を除算してみます。   3角関数の差の公式が導けました。   複素平面で見ると、偏角Aが0のときの   性質を導けます。   cos0 = 1   sin0 = 0   偏角Aが0のときは、実数成分だけになると言っています。   大学や社会人のセミナーで、数式のもつ意味を説明すると   複素平面上の性質と3角関数の公式を結び付けられない   技術者が多くいます。学校の中で試験をパスするだけに   終始すると、こういう基本も応用もできない技術者になる   のではと感じます。
微分  アナログコンピュータは、数学モデルで記述したシステムを  扱うので、微積分を理解していないとモデルを作れません。  Euler式を偏角Aで微分すると、どうなるかを見てみます。  j = 0 + j = exp(jπ/2)  という性質があるので、代入変形してみます。  この式が意味していることは、以下となります。  Euler式を偏角Aで微分することは、位相をπ/2だけ  加えることと等価である。  別の言い方では、次のようになります。  信号を微分した結果が必要なら、位相にπ/2だけ  加えてみればよい。  微分という演算が、位相にπ/2だけ加えることに  なり、遅延回路を用いれば微分を実現できると言え  ます。  2回微分すると、どうなるのかを見てみます。  式を変形してわかることは、以下です。  Euler式を2階微分すると、符号を反転した式になる。  2階微分することは、符号反転で実現できる。  符号反転は、位相をπだけ遅らせることと等価になる。  アナログコンピュータで2回微分する数学モデルがあれば  その部分は、符号反転の回路で実現できるのです。  複素平面で、1階微分、2階微分で実軸にある点が  どう移動するのかを見てみます。  1階微分するごとに、複素平面上を左回りで  回転していきます。  3階、4階微分すると、どうなるのかを見てみます。  複素平面上の左回りとなるので、n階微分では  次の式が導けます。  1回微分するごとに、位相にπ/2を加えるので  4階微分では、位相に2π加えて元の位置に戻る  ことがわかります。  1階微分の式を、直交座標形式で変換してみます。  3角関数の微分公式が出てきました。  高校までの数学では、導出に苦労しますが  複素数のEuler式を使うと簡単です。
積分  微分の性質がわかったので、積分を考えていきます。  積分は微分の逆演算なので、1階微分の処理を  ながめて変形していきます。  1階微分でEuler式になったのなら、もとはEuler式を  虚数単位jで割った式であったと考えられます。  微分すると定数は0になるので、積分定数を加えた  カタチになります。  もう少し変形すると、次のようになります。  Euler式を積分すると、位相に(-π/2)だけ加えて  オフセット値がつくとなったなら、もとはEuler式を  虚数単位jで割った式であったと考えられます。  微分すると定数は0になるので、積分定数を加えた  カタチになります。  微分と積分の違いを比較してみます。  積分 → 位相に(π/2)を加える  微分 → 位相に(-π/2)を加える  OPアンプを利用した回路で、微分方程式、積分方程式を  解く場合、位相に注目した回路を構成すればよいと言う  ことです。  Euler式を利用するとき、次の関係があると  覚えておけば、単純な回路で数学モデルを  記述できることがわかります。  積分は、微分の逆演算なので、n回積分すると  次のような性質を持ちます。  微分も積分も、複素平面上では回転処理になるので  左回り、右回りの回数を指定することで公式となる  と覚えておけばよいでしょう。

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